建築と腕時計とをつなぐ思考

これまでにも日本人クリエーターとのコラボモデルを展開してきたブルガリの「オクト フィニッシモ」。建築家・妹島和世氏が手掛けた最新バージョンが発売。

これまでにも日本人クリエーターとのコラボモデルを展開してきたブルガリの「オクト フィニッシモ」。建築家・妹島和世氏が手掛けた最新バージョンが発売。

キャリバーBVL138
妹島氏のサインが入ったサファイアケースバックを通して、プラチナマイクロローターを備えたキャリバーBVL138の美しい仕上げを見ることができる。

建築と時計に共通するコンセプトとは

「このガラスのファサードには小さなドット処理がしてあります。全体を反射面にするのではなく、ドットを用いて反射させると、周囲の街並みが柔らかく映りながら、ガラスを通して歴史ある昔のファサードも透けて見える。透過と反射の関係性をファサード上で作ってオーバーラップさせています。この時計も、コンセプトは同じです。風防のドットは周辺に向かうにつれ密度が濃くなり、針の中心部が最もよく見える。角度によって針だけが浮かんで見えたり、見えなくなったり。全体を鏡面にしたことで周囲の風景が映り、青空の中に針が動いていたり、自然の中ではグリーンの中で針が浮かんだり消えたりもする」

スケール感が大きく異なる建築と腕時計。しかし共通のコンセプトが実現されているのが興味深い。

「建築の場合、大きなものでも近づきやすく、人の体と近い関係を持てるようなものにしたいという思いがあります。そこを使う人を想定するというよりは、いろんな人がその人なりに近づいて、使って、好きになってもらえるような。腕時計は、そもそも小さいから近づきやすいし、それでいて周囲の環境をどこまでも映して、大きさや広がりを感じることができればいいなと。時計は単なる物体ではなく、抽象的な時間というものを一瞬にして浮かび上がらせてくれますから、広がりや奥行と重なって見えるようにと考えました。こういう形で抽象化すると、フォーマルなパーティーでも、カジュアルな場面でも、自然の中でも、使う人がいる環境を映しながらで、そのときどきで違う感覚で着けられるのではないでしょうか」

妹島氏ならではの世界観が実現されたタイムピース、その感覚を確かめてみる価値はありそうだ。

妹島和世 せじま・かずよ(建築家)

妹島和世 せじま・かずよ
建築家。茨城県生まれ。1981年日本女子大学大学院修了後、伊藤豊雄建築設計事務所勤務を経て、87年妹島和世建築設計事務所を設立。95年西沢立衛とのユニットSANAAを設立。2004年ベネチアビエンナーレ国際建築展金獅子賞、2010年建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞、同年フランス芸術文化勲章オフィシエ、16年紫綬褒章、22年高松宮殿下記念世界文化賞ほか数々の賞に輝く。2010年には、第12回ベネチアビエンナーレ国際建築展のディレクターを、日本人として、また女性として初めて務めるなど、国内外で高い評価を得ている。2022年東京都庭園美術館館にも就任。

まつあみ靖 まつあみ・やすし
1963年、島根県生まれ。87年、集英社入社。週刊プレイボーイ、PLAYBOY日本版編集部を経て、92年よりフリーに。時計、ファッション、音楽、インタビューなどの記事に携わる一方、音楽活動も展開中。著者に『ウォッチコンシェルジュ・メゾンガイド』(小学館)、『スーツが100ドルで売れる理由』(中経出版)ほか。

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。