ART

ANDY WARHOL×茶禅華 川田智也

瞬間の芸術「料理」に全エネルギーを注ぐ五人の料理人が、ANDY WARHOLの世界に挑む。茶禅華 川田智也の挑戦とは。

Photo Masahiro Goda  Text Izumi Shibata

瞬間の芸術「料理」に全エネルギーを注ぐ五人の料理人が、ANDY WARHOLの世界に挑む。茶禅華 川田智也の挑戦とは。

茶禅華 川田智也
茄子の皮に入れた細かい包丁目は食べやすさを配慮したものだが、羽を思わせる繊細な見た目を作り出す。並べた茄子は蒸籠で1分間蒸し、1mmにも満たない薄さの茄子を絶妙に加熱。「このビジュアルも味わいも、ハリがあり力強い秋茄子だからできました」と川田さん。仕上げにかけるのは金箔入りの生姜のソースで、清湯(チンタン)に塩、酢、生姜を加えて作る。「姜汁茄子」という、加熱した茄子に生姜入りのタレを合わせる伝統料理を応用した。

伝播した土地に順応した孔雀明王や、異国の文化を自分のセンスで表現したウォーホルは、中国の食文化を日本の感性で表現する「和魂漢才」-川田さんの信念と重なる。「文化が伝わり、溶け込むことで、より豊かなものが生まれる。そうしたあり方に私は憧れ、共感するのです」

ちなみにウォーホルがこの作品を描いたのは28〜29歳の頃。「芸術家として一番多感な時期です。ここでもまた、自分に引き合わせて考えてしまう(笑)」と川田さん。その年頃の川田さんは、中国料理を10年間学び、日本料理に移る時期だったという。「まさに異文化に飛び込む覚悟を決めたとき。なのでウォーホルはその年齢でどんな感性、感覚だったか。この旅行の後に彼は芸術家として飛躍しますが、やはり何か覚悟を固めたのだろうか……なんて思うのです」

「アートは好きですね。人の想像力を、時空を超えて広げてくれます。と同時に、自分の内面を見つめさせます」。川田さんは今回、ウォーホルの孔雀の絵を出発点にまさにそのような体験をした。その結果生まれた料理の迫力からも、氏の深い思いを感じ取ることができる。

川田智也 かわだ・ともや

川田智也 かわだ・ともや

1982年、栃木県生まれ。「麻布長江」で10年間にわたり四川料理を修業した後、「日本料理 龍吟」に入門。同台湾店である「祥雲龍吟」の立ち上げから参加し、副料理長を務める。帰国後、2017年2月に「茶禅華」をオープン。『ミシュランガイド東京 2022』では三つ星の評価を得ている。

●茶禅華
東京都港区南麻布4-7-5
TEL 050-3188-8819(予約専用番号)
sazenka.com

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